メタモルフォーゼの縁側 感想・あらすじ メタモルフォーゼの縁側 感想・あらすじ

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ふらりと立ち寄った本屋で老夫人の目に止まった一冊のコミックス。「きれいな絵」に惹かれ覗いた世界は、少年同士の恋模様ーー。

75歳にしてBL(ボーイズラブ)を初めて知ったおばあちゃんと、密かにBLが好きな女子高生の交流を細やかに描いた作品です。

おばあちゃん×BL。

まったくの別次元、交わるはずのない両者が出会ってしまったような印象でしたが・・・

とにかく、良い!!

ふたりの交流はもちろん、街の風景や日常の景色がとても丁寧に描かれていて、時がゆっくりと流れてゆくような、ほのぼのとした雰囲気がとても素敵です。

今回は「このマンガがすごい!2019 」オンナ編の第1位を獲得した話題作『メタモルフォーゼの縁側』のあらすじ感想をお届けします。

ここが魅力!『メタモルフォーゼの縁側』

  • ★ 細やかに描かれる日常の景色がノスタルジー溢れて良い。
  • ★ おばあちゃんのBLに対するシュールな反応。
  • ★おばあちゃんと女子高生のほんわか心あたたまる日常。

『メタモルフォーゼの縁側』のあらすじ 

ふたりの出逢い

市野井さんは75歳の老婦人。自宅で書道教室の先生をしながら一人暮らしています。

亡き夫と通った馴染みの喫茶店はいつのまにやら閉店。時の流れに寂しさを感じながら、ふらりと立ち寄った本屋で一冊のコミックスに目が止まります。

ふたりの少年が寄り添う「きれいな絵」の表紙。

心惹かれた市野井さんは、思わず手に取りレジへ。その一冊こそBLコミックスだったのです。75歳のおばあちゃんが、その中身を察するわけもなく・・・

受け取ったのは書店員の佐山うらら。人知れずこっそりとBLにハマっている女子高生でした。

BLを手にしたおばあさんに一瞬動揺するも、その後も新刊を求めて書店にやってくる市野井さんと思わずBLトークで盛り上がり・・・年の差58歳の友情がそっと花開くのでした。

二人の心の交流こそ見どころ

BL×おばあちゃん×女子高生。

異世界交流のような斬新な設定も面白いのですが、読者の心に響くのは、なんといってもBLを介して生まれる二人の交流です。

応援したくなっちゃうふたり

ふたりとも心にちょっとした孤独をかかえています。

うららは、どうしようもない人見知りというわけではないのですが、学校で一人でいることに慣れてしまっているような感じ。

「私もあんなふうに好きなものの話で盛り上がったりしたい」

『メタモルフォーゼの縁側1巻』

とクライスメイトを眺めつつも、キャラじゃないと踏み出せずにいます。

市野井さんは、書道教室を営んではいるものの、やはり老人の一人暮らし。見ていて少し心細いし、なんだか寂しい。

出会った当初はなんだかぎこちない二人。でもお互いを優しく気遣い合いながら徐々に仲良くなってゆく様子はほんとにほっこりします。なんだか応援したくなる・・・!

BLは恥ずかしい?75歳には通用せず

BLは一部では人気がある一方、冷ややかな目も少なくないのが事実。

そんな世間のBLに対する通常反応なんて知る由もなく、市野井さんは病院の待合室で人目もはばからず、カバー無しのBLをガンガン読み進めます。

またマンガの話をしたくてたまらない市野井さんは、うららをお茶に誘い出します。そしてのっけから、デリケートな話題へ。

「うららさんは ああいう漫画(=BL)よく読まれるの?」

『メタモルフォーゼの縁側1巻』

隠れてBLを楽しんでいたうららは答えにまごつき・・・そりゃそうだ。戸惑いはあったものの、初めて誰かと好きなものを共有する嬉しさを感じるのでした。

好きなものを素直に好きと言え 、BLに対する恥ずかしさを微塵も感じていない市野井さんはやはり最強。75歳にもなると他人の目なんて気にならなくなるのでしょうか。

そんなお茶目な市野井さんの振る舞いは、まさに思春期ど真ん中のうららに少しずつ影響を与えてゆきます。

ふたりは「メタモルフォーゼ」してゆくのか

「メタモルフォーゼ」はドイツ語で変身という意味だそうです。

2巻の時点で、うららは幼馴染やその周囲との人間関係について、少しずつ変化していく兆しを感じますが、市野井さんに関してはまだはっきりと描かれていません。

市野井さんちの縁側で繰り広げられるBL会合を通じて、ふたりがどう変化してゆくのか・・・楽しみですね!

BLが苦手・・・それでも楽しめます!

私もごりごり絡み合いのBLは苦手な人間です・・・が!『メタモルフォーゼの縁側』はBLが話題の中心ではありますが、あくまで脇役。

主役は、市野井さんとうららの心の交流とです。

BLに対する市野井さんの反応も、クスッと笑えるポイント。

男の子同士のキッスのシーンを初めてみた市野井さんが

「あらー・・・」

『メタモルフォーゼの縁側1巻』

と頬を赤らめたり、

「私初めて読んだんだけど なんて言ったらいいのかしら・・・応援したくなっちゃうのよ」

『メタモルフォーゼの縁側1巻』

と完全に親戚のおばさん目線だったり・・・

作品全体がゆる~いほんわかした雰囲気なので、安心して読めますよ。

BLに引かずに、ぜひ手に取ってほしい!

  • メタモルフォーゼの縁側/
  • 1〜3巻(未完)/
  • 鶴谷香央理